こんにちは。
ゲームデザイナーのごりぱちです。
皆さんは、「ゲーム」と聞くと、印象をお持ちでしょうか?
おそらく、ほとんどの方が「ゲームは遊びや娯楽」,「ゲームは教育に良くないから、子供にさせたくない」といった印象をお持ちのはずです。
もちろん「ゲームが楽しい!好き!」という方はたくさんいるでしょうが、「ゲームは教育にも良い!」という印象をお持ちの方は、ほとんどいないのではないかと思います。
僕はこれまで、エジュケーショナル・ボードゲームデザイナーとして、”食料自給率ゲーム”,”鳥獣対策ゲーム”,”海洋資源管理ゲーム”などを作ってきましたが、制作過程でこんな確信が生まれました。
ボードゲームは単なる娯楽ではなく、最強のコミュニケーションツールだ!
もっと教育現場で活用できたら素敵だな!
なので今回は、なぜ僕がこんな考えに至ったのか、一般的な誤解を1つずつ解き明かしながら、ボードゲームに対する新しい考え方を皆さんに共有したいと思います。
では、レッツゴー!!!
ボードゲームを教育現場に用いる際の誤解
ボードゲームに対する誤解① ゲームは勉強の邪魔だ
大学院生の頃、教科書で一方的に「食料自給率が低い!自給率を上げるべきだ!」と記述されていることに疑問を持ち、
「ゲームを通じて、実際に食料自給率が低い時の問題,食料自給率が100%の時の問題を考える機会を設けるべきだ。」と感じました。
そこから、小学生を対象としたボードゲームを作成することを決め、研究室とご縁のある地域の小学校を10校ほど回りました。
結果、8校に断られ、2校に受け入れてもらいました。
成功率は20%。
その際、断られた小学校の校長先生や担当の教員からはこんな言葉をかけられました。
「ゲーム?ゲームはただの遊びだろ?勉強の役にたつわけがない。うちは受け入れられない。」
「ゲームねえ。学校に遊びに来てる訳じゃないからね。ゲームなんか授業中に導入できないよ。」
「学校でゲームなんかしたら、保護者に怒られる。」
僕は、ゲーミングシミュレーション,シリアスゲーム といった、ゲームを用いた学術方法や海外で実際に導入されている事例を紹介していたのですが、「ゲーム」という言葉一つで話を聴く前から断られてしまったこともあります。
それだけ、日本の教育現場では「ゲーム=無駄。教育に使えない。」といった構図が固く根付いているのだと感じました。
ボードゲームに対する誤解② ゲームで社会課題は解決できない
社会人になり、鳥獣対策や耕作放棄地など、様々な社会課題に関するボードゲームを開発する過程で、現地調査やテストプレイを繰り返す中で、現地の住民や役所の方からこんなコメントをいただいたこともありました。
「ゲームで社会課題が解決できるなら苦労しない」
「ゲームなんかで何ができる。ただの遊びで何ができるんだ。」
「どうせ大したことはできないよ。ただのゲームじゃん。」
「時間の無駄だ。」
とにかく、「ゲーム」と名がつくものに対して、非常に悪い印象を持っている方が一定数いることが身にしみました。
しかし、アメリカやヨーロッパでは、日本が嫌う「ゲーム」を用いた教育方法が確立され、学問としても認められ、海洋貿易の政策プロセスにゲームを用いるような取り組みまで行われているのです。
この違いは一体なんなのでしょうか?
ボードゲームを教育現場に用いるメリット
ボードゲームのメリット① 失敗から学べる
ゲームが持つ、最も素晴らしい特性が「失敗してもやり直しがきく」ことです。
実際の人生はもちろんのこと、核問題,原発問題,政治問題など、一歩間違えたら悲惨な結果が待ち受けておりやり直しがきかないことが数多く存在しています。
しかし、ゲームであれば、失敗することで死ぬわけでもなく、なんの危険に晒されることもありません。
なので、環境問題のシミュレーション,金融問題のシミュレーション,政治問題のシミュレーションなど、シリアスなトピックを扱ったゲームが開発されており、「失敗=悪」ではなく、「失敗=新たな学び」という思考回路が育てられます。
ボードゲームのメリット② 複雑な概念を理解できる
これまで開発されたゲームの中には、食料自給率,生物多様性,鳥獣対策など、私たちからしたら普段触れにくいトピックであり、正直難しそうで知る機会すらありません。
しかし、ゲームにすることで、これらの難しそうなトピックが一気に簡単そうに思えてきます。
ボードゲームは、これまで断絶されてきた複雑そうに見えてきたトピックを、誰にでもわかる形で提供されているコミュニケーションツールでもあるのです。
ボードゲームのメリット③ 学習活動の意欲を高めやすい
やはり、ゲームとなると、「学習」よりも「面白い遊び」というイメージが先行するため、意欲や集中力が増します。
その影響もあり、複雑な事象を扱ったボードゲームだとしても、あくまでも「ゲーム」なので、通常の講義と比較しても授業に対する姿勢がうって変わります。
実際、食料自給率を扱ったゲームを開発し、小学校でプレイした際には、アンケートの結果、「通常の講義と比較し、授業に対して集中できた」という学生は9割りを越え、自給率に対する理解度も増していました。
ボードゲームのメリット④ 平等に意見を発することができる
オンラインゲームと違い、ボードゲームは必ず一緒にプレイするプレイヤーが複数人存在します。
その人たちの思考を読み、コミュニケーションを取りながらプレイする際、見落とされがちなのが、参加者は必ず自分の意思を示しながらゲームに参加している点です。
とあるトピックに対して、通常のディスカッションをする際は、声の大きい人,話すのが得意な人が活発になり、話すのが苦手な人はあまり議論に入っていけないことってありますよね。
しかし、ボードゲームであれば、毎ターン自分の意思を行動で示すことになります。
これはつまり、誰にでも平等に意見を示す機会が提供されているということです。
各プレイヤーが、とあるトピックに対して、常に考え、アウトプットすることができる。
これも、ボードゲームの魅力だと言えます。
ボードゲームを教育に活用した事例
ここでは、ボードゲームを用いて課題解決に挑戦している文献や団体を紹介していきます。
Meet the Challenge. 海洋貿易ボードゲーム
これは、エストニアやノルウェーなど、北ヨーロッパの海を舞台とした海洋貿易の戦略を練るためのボードゲームです。
水産庁の方が多く集まる学会で用いられ、各国の官庁職員がボードゲームを通じて最適な貿易ルートや予算などを話し合う場として活用されています。
病原菌感染対策ボードゲーム
▶︎「感染対策に関するボードゲームと講義による 学習効果の比較に関する検討」(pdf)
看護師の感染症対策学習において、ボードゲームを使用した時と通常の講義とで、知識の定着にどのような差が生じるかを調査した文献です。
ここでは、ボードゲームを用いると「モチベーションの維持・動機付け」に長所を持ち、通常の講義では、「知識の包括的な取得」に長所を持つとされ、どちらか一方ではなく、両方とも用いる学習スタイルが良いとされています。
自治体経営ボードゲーム
自治体の財政管理手法などを学ぶ上で、ここ数年はやっているボードゲームです。
財務管理と聞くと難しいそうに感じるが、ボードゲームを用いることで、”「財務管理における最重要点・全体の流れ」を手軽に学ぶことができる”という評判で、全国に広がっています。
SDGs(持続可能な開発目標)学習ボードゲーム
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。
by 外務省
聞いただけではピンときませんが、一言でまとめると、
「地球と人類が繁栄するために、世界全体で取り組むべきことを定めた目標」
それがSDGsです。
SDGsボードゲームでは、取り組む内容、またそれに伴う経済活動の変化や取り組むべきことをボードゲームを通じて学べるように設計されています。
シリアスゲーム,ボードゲーム教育に関するオススメ書籍
ゲーミングシミュレーション,シリアスゲーム,ゲームを用いた教育などについて学びたい方は、こちらの書籍をオススメします!
ボードゲームを用いた教育には未来がある。
いかがでしたでしょうか?
ボードゲームに対して、新たな印象を持つことができたでしょうか?
ボードゲームは、教育にもしっかりと応用できるツールになっているので、是非とも活用してみてください!
質問などあれば、気軽にコメントいただけると嬉しいです!
では、今回はこれまで!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
また次回お会いしましょう!