こんにちは。
ごりぱちです。
「日本の農業は課題だらけだ」
「日本の農業の未来は暗い」
こんな発言が日本国内でよく聞かれます。
僕自身、農学を専攻して大学院まで進学しているので、
「日本農業の未来をより良くするためには何が必要なんだろう?」
と考えることは珍しいことではありません。
僕はドイツで開催された「アグリテクニカ」という世界最大の農業機器の展示会に参加する機会があったのですが、
その展示会に参加する中で、「日本の農業に必要なのはこれだったのか!!!!」と思える気づきがたくさんありました。
▶︎ドイツのアグリテクニカや、オランダのワーヘニンゲン大学へ視察した際のレポート(PDF)です。
ということで、この記事では、アグリテクニカを通じて得た、ドイツの農業と比較した際の日本の農業の課題、そして将来像について紹介しています。
「日本の農業の未来に必要なことについて知りたい」
「日本と海外の農業の違いを知りたい」
という方にとって、少しでもお役に立てると嬉しいです。
では、レッツゴー!!!
日本の農業との違い-農業機器の大きさ
アグリテクニカに参加して、真っ先に目に飛び込んでくるのは、日本では北海道くらいでしか見たことがない、馬鹿でかい農業機器の数々です。
男どもの心は、いとも簡単にくすぐられてしまい、大興奮です。
⬇︎僕の身長は178cmです。この機械の高さは、3m以上はありました。
⬇︎田植え用の機械ですが、横幅は4m以上もあります。でかい。。。
⬇︎こちらは、全長が5mほどある化物のような大きさのものです。
⬇︎農業機器を売っている会社のブースでさえも、なぜかオシャレに見えます。
日本の農業との違い-農業教育
アグリテクニカの会場には、数多くの農業ゲームが展示がしてありました。
このゲームを通じて、農地の作り方や、最適な農地内の建物の配置を学ぶそうです。
いわゆる、シリアスゲームの一種ですね。素晴らしい。
⬇︎PS4で農業経営が学べます。
⬇︎中高生がこぞってプレイしていました。
そして驚くべきことに、会場には農業機械の動かし方をVRで学ぶコーナーも充実していたのです!
🇩🇪「農家の子供は、VRを通じて農業機器の使い方をマスターするようになってきています。
怪我もしないし、機械も故障しない。そしてゲーム性があるので子供はどんどん技術を身につける。
それぞれの農業機器メーカーがゲーム会社とタッグを組んでいるので、実際の機械と遜色ないです。」
⬇︎「すごい」の一言。僕もプレーしたかったのですが、この子が凄まじく集中していたので遠慮しました。笑
⬇︎子供たちがこぞってVRでプレイしていました。こりゃ楽しく学べますわ。
日本の農業との違い-ブランディング
アグリテクニカの会場の一角に、農業雑誌を取り扱っているコーナーがありました。
ここでは、農業の技術書だけでなく、「ヤバイ!この農家かっこいい!」と思えるカッコいい雑誌がわんさか置いてあり、めちゃめちゃ興奮しました。
農業の雑誌コーナーで興奮するなんて、人生で初めてのことでした。
正直、こんな刺激的な本に囲まれていたら、
「農家ってめっちゃカッコいいやん!」となるのは、もはや必然と言えます。
⬇︎Top Agrarというのは、篤農家を特集している雑誌です。
⬇︎農業のことが学べる技術書や、農家がカッコよく描かれている子供用の絵本もありました。
⬇︎小学生でも分かりやすく農業機器について学べる本もあります。
日本の農業との違い-子供の数
アグリテクニカで、最も象徴的とも言えるのが、「子供の数が圧倒的に多い」という点です。
家族連れで会場を訪れる人たちは珍しくなく、子供たちが大人に混じって、農業機械をいじっていました。
英才教育と言っても過言ではありません。
⬇︎中学生が機械に試乗していました。彼が乗る機械をお父さんと探していたようです。すげえ。
⬇︎幼稚園くらいの子供も、興味津々で農業機器を見ていました。そりゃかっこいいから見ちゃうよね。
⬇︎家族総出で農業機器を見ています。子供も立派な職人の一員ですね。
会場の子供に農業の印象について聞いてみました。
🇩🇪(中学生)「農業って重要だよね。僕たちが皆んなの食卓を守っているんだ。
僕もお父さんのように、早く立派に働きたい。」
🇩🇪(高校生)「農家はかっこいい。自然と共に生きて、たくさんの人を養っている。
僕は農家として生まれたことに誇りを持っているよ。」
🇩🇪(高校生)「農業は儲かるからね!1,000万円なんて余裕だよ!」
🇩🇪(高校生)「ドイツの農業も、高齢化が進んでいて、課題や問題がたくさんあるのは事実なんだ。
でも、農家を馬鹿にする人なんていないし、農家が儲けが少ないわけじゃない。
農業は面白い職業だし、まだまだ人気だから、そこまで心配はしてないよ。」
もちろん、このような会場に来ている人たちなので、そもそも農業に対して意識が高いという背景はありますが、
みんな農業に誇りを持っていて、その姿勢になんだか感動してしまいました。
日本の農業との違い-経済力
アグリテクニカの会場に置かれていた農業機械、めっちゃ高いです。(僕の感覚だとね。)
例えばこちら、1,200万円くらいします。
しかし、農家の中には、キャッシュで機械を買う人もいます。
なんてことだ!!!!!
どんな仕組みなんだ!!!!
ということで、商品を販売している人に聞いてみました。
🇩🇪「農家に対しては、政府からの補助がしっかり出ているので、
年収が1,000万円を超えることは珍しいことではありません。
また、仮に購入の際に十分な資金がなく、銀行借入で購入したとしても5年間は無利子なのです。
ドイツの農家さんは、色々なサポートのもとで農業活動に取り組んでいます。」
一説によると、農家の収入の9割は政府からの補助金という話もあるくらい、欧州の農家は守られているのです。
2006年の時点では農業所得に対して公的助成が占める割合はスイスが「95%」、フランスが「90%」、イギリスが「95%」でした。
それが2013年にスイスは「100%」、フランスは「95%」、イギリスは若干下がって「91%」になっています。
それぞれ農業所得の9割以上が税金で賄われているのです。
日本の農業は、政府から「攻めの農業だ!」ということで、どんどん助成金が削られており、
農家さんは資本主義経済の競争に巻き込まれ、価格破壊の道を突き進んでいます。
こんな状況では、なかなか日本の農家の収入は増えることなく、
未来の農家のなり手は「いや、お金稼げなすぎて無理」と、農業から離れていってしまうでしょう。
農家を増やしたいにしても、「稼ぎが十分にある」というモチベーションを生まないといけないと思います。
日本の農業の問題と課題
僕は、農業人口を増やすために、最も必要なことは「生活できるイメージ」を持たせることだと思っています。
もっと言えば、「会社員よりも裕福な生活ができるイメージ」を与えることが、
農業生産人口を増やすために必要だと思っています。
現に、ドイツのアグリテクニカで出会った方々は、「農業が儲からない産業」というイメージを全く持っておらず、
むしろ「安定した生活が望めて、自然と触れ合えて、かつ上手くいけば儲けることができる」というポジティブなものでした。
日本の農家の収入
ここで、日本の農家さんの平均収入を調べてみました。
新規就農給付金制度では年収250万円を超えると給付金の支給対象ではなくなります。
年収250万円が農家として1人前と認められる水準だと言えるでしょう。
年収250万円はサラリーマンの感覚だと少なく感じるかもしれませんが、
食費や家の家賃が少なく済む事を考えれば生活できる必要十分な水準と評価できます。
▶︎農家の平均年収は約450万円!?経営形態による収入格差など実態を調査(日本の場合)
こちら、どう思いましたか?
「250万円あれば、必要十分」
いや、あり得ないでしょ!!!
月20万円だよ?
農家って個人事業主だよ?
年金、健康保険、その他諸々の税金とか払ったら、手元に残らないよ?
なんで年間250万円で十分って言えるの?
もう、ツッコミ放題でした。
本当に250万円という水準で生きていけるのでしょうか?
このような水準の職業に、若者が憧れを持って新規就農する勇気が持てるのでしょうか?
親が農家さんならば、子供も自分が農業をやるイメージを持つことができますが、
日本政府は「新規就農者の数」を増やそうとしています。
つまり、親が農家じゃなかった人たちも就農することを想定しています。
全くイメージが沸かない仕事をする際に、収入を一つの軸としてみるのは、当然のことでしょう。
ドイツの農家の収入
ドイツの農家さんの収入について調べると、日本の農家さんと大きな違いがありました。
2013/2014 年の農業所得については、まず粗収益(収入から経費を差し引いたもの)が ほとんどの営農類型で増加した。
1労働力あたりの平均粗収益は36,390ユーロ,
1経営あたりの平均粗収益は63,380ユーロであった。
「日本が450万円で、ドイツも450万円か。そんなに変わらないじゃないか!」
実は、大きな違いがあるんです。
日本の年収450万円は、税引き前の数字で、
ドイツの年収450万円は、税引き後の数字なのです。
本当の年収と手取り金額をまとめます。
額面の年収 | 手取りの年収 | |
日本の農家 | 450万円 | 350万円 |
ドイツの農家 | 600万円 | 450万円 |
この表を見て分かるように、実際にはドイツの農家さんの方が平均年収は150万円ほど日本の農家さんを上回っているのです。
さらに、ドイツの場合は、政府からの助成金も入ってくるので、実際の年収の違いはさらに広がることになります。
かつ、政府の助成金によって必要最低限の生活保障がされているので、
自然災害などで収入が激減したとしても、生活に困窮することは基本的にありません。
ドイツの農家さんは、生活の保証を政府が担保しているので、
こだわりのある作物を育てる環境が整っているのです。
日本の農業の将来のために必要なこと
僕は、欧州各国が採用している「農業分野への助成金予算を増大する」方針に賛成です。
農業は、工業ではありません。
材料を機械に打ち込めば、作られるものではありません。
早く作ろうと思って作れるものではありません。
そして何より、農家がいなければ食が提供されません。
ライフラインを確保してくれている産業に対して、資本主義の競争原理を当てはめることはナンセンスだと思います。
市場の競争原理に任せると、外国からの大量生産に任せた農作物が大量に国内流通に流れ、多くの方は安い外国産のものを手にとります。
それがどれだけ農薬で汚れていようが、化学薬品に塗れていようが、消費者は知る術がありません。
日本には、数多くの農家さんが、消費者の健康を意識して、化学薬品を使わない作物を作っています。
しかし、少しでも市場価格から高くなると、一気に買い手が減ってしまいます。
それはつまり、日本という国が、とにかく安い作物を求めていることを意味し、
政府からの助成金がなければ、本当にこだわりを持って作物を栽培している農家が絶滅していくということです。
僕は、そんな将来を自分たちの子供世代や孫世代に残したくありません。
大量生産型の農業がしづらい国だからこそ、こだわりを持った農家さんたちが安心して生活をして、
彼らの技術を100%発揮できるような労働環境を政府が用意することが、
将来の日本農業を立て直すためには必要だと思います。
⬇︎偉大な経済学者である宇沢弘文さんが、農業経済の視点についても書いている書籍です。とても勉強になります。
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では、今回はここまで!
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
また次回お会いしましょう!