こんにちは。
ゲームデザイナー のごりぱちです。
僕はこれまで、ボードゲームデザイナーとして、”食料自給率ゲーム”,”鳥獣対策ゲーム”,”海洋資源管理ゲーム”などを作ってきましたが、
その制作過程で、“社会課題に対するボードゲーム制作における最も重要な要素”を発見することができたので、今回はその内容をご紹介していきます。
「教育用ボードゲームを作りたい!」という方の参考になれば幸いです。
では、レッツゴー!!!
教育用ボードゲームの作り方
さて、ここではめちゃくちゃ簡単に、教育的なボードゲーム作りの手順をご紹介していきます。
鳥獣対策ゲームを制作した時の時間数を例として挙げています。
ボードゲームの作り方① 対象分野の情報収集
まず、クライアントから「○○の分野に関するボードゲームを作りたい!」と依頼がきます。
その分野に対して、専門家を交えながら、チーム内で知識のインストールを行なっていきます。
具体的な量ですが、鳥獣対策ゲームの場合、関連書籍を2-3冊 + 専門家,クライアントとのディスカッション(1時間×4回程度)です。
ボードゲームの作り方② ゲーム内容のディスカッション
ここが非常に重要です。
クライアントは、「○○に関するゲームを作りたい」ときますが、その○○にたくさんの要素を詰め込んできます。
例えば、鳥獣対策ゲームでは、クライアントは「鳥獣対策を効率的に行えるようなゲームを作りたい」と依頼してきます。
すると僕たちは、「なるほど、では、何が問題なのですが?最も解決しなければならないことは何ですか?」と聞くと、たくさんの回答が返ってきます。
「人口が少なくて手伝える人がいない」「高齢化でハンターの生産性が低い」「役場の予算が少ない」「住民が非協力的」などなど。
ここは最重要パートなので、後ほど詳しく述べますが、ボードゲームを作る際に最も必要なことは、トピックの断捨離です。
ボードゲームのメッセージを1つに絞るために、ゲーム内容のディスカッションには時間を割きます。
鳥獣対策ゲームの場合は、専門家,クライアント,開発チームを交えて、合計で10時間以上費やしました。
ボードゲームの作り方③ 参照するボードゲーム探し
ボードゲームを通じて伝えたいメッセージを絞り込んだら、次はそのメッセージに合うようなゲーム設計をしていきます。
僕たちの場合、すでに世に出ているボードゲームの内容を組み合わせてゲームを設計することが多いです。
なぜなら、開発の効率が圧倒的によく、間違いが起きづらいからです。
世に出ており、かつ人気があるボードゲームは、ゲームの仕組みがしっかりしており、確実に面白いからです。
教育的ゲームにおいてよく聞く苦情が、「全く面白くなくて集中できない」という点です。
せっかく頭をひねって生み出したゲームが、コンセプトは良くても使ってもらえなかったら全く意味ないですよね。
僕らはそれを避けるためにも、既存のボードゲームの枠組みを組み合わせながら、最適なゲームバランスになるように設計していきます。
この工程では、フィットするボードゲームを探すためにボードゲームカフェに通うことになります。
鳥獣対策ゲームの場合、合計で7-8時間,約10種類のボードゲームを試し、基本の形を整えることができました。
ボードゲームの作り方④ テストプレイ
ゲーム設計の骨子ができたら、あとはひたすらテストプレイを繰り返します。
鳥獣対策ゲームの場合は、年代や性別を問わずに、鳥獣対策に関するディスカッションを促したかったので、
テストプレイでも年代、分野を問わず、幅広い層の方にプレイしてもらいました。
*もし、特定の層を狙ったボードゲームであれば、その層の方を集めてテストプレイを行うのがいいでしょう。
テストプレイごとに改善が必要なので時間がかかりますが、ボードゲーム開発のクライマックスなので辛抱強く行います。
鳥獣対策ゲームの場合、この工程で15回-20回程度,合計30時間程度テストプレイを行いました。
⬇︎これまでの手順をまとめると、以下のような流れになります。

鳥獣対策ゲームを引き合いに出すと、
合計作業時間は、約70時間,期間は半年程度に及びました。
チームの人数が限られており(5人)、また作業時間が週末に限られていたため、非常に時間がかかってしまいました。
ただ、目安として、「約100時間程度かければ、ボードゲームが開発できる」と考えていただければいいと思います!
教育用ボードゲーム作りで最も重要な要素
先ほど少し述べましたが、ボードゲーム作りには、1つの鉄則があります。
それは、
1つのゲームに1つのメッセージ
です。
先ほど、鳥獣対策ゲームの例をあげましたが、クライアントは対象となる分野に精通しているため、その課題点はきちんと把握しています。
ただ、課題点を数多く把握しているのにも関わらず、
「どの課題を解決することで、どんな未来を描けるのか」
「どの課題の解決に最も注力すべきなのか」
という問いに対して、明確に答えることがなかなか難しいのです。
ボードゲームのメッセージとは、最も重要な課題の解決に挑むことなので、
メッセージを1つに絞らない限り、ボードゲームを作ることができません。
ましてや、対象となる分野に詳しくない人も巻き込んでボードゲームを通じてディスカッションをするのであれば、余計に無駄な情報は省かないといけません。
だからこそ、対象分野に対してそこまで知識がない僕らが納得できるようなメッセージをクライアント自身に気づかせることが最も重要であり、ボードゲーム作りで最も重要なことだと考えているのです。
目に見える成果物としてボードゲームがあるのですが、その過程で明確になる「重要視すべき課題が発見されること」の方がよっぽど大事なのです。

ボードゲームをワークショップで用いる際の手順
さて、ボードゲームが開発できたら、次にボードゲームを用いて実践してみましょう。
ボードゲームのプレイ時間によりますが、私たちは学校などでも使用されることを想定して、開発するボードゲームは基本30分以内に終わるように設計してあります。
一般企業に対する実践であれば、全体で90分を想定し、以下のような時間配分になります。
1. ブリーディング,10分
2. ゲームプレイ,30分
3. フィーディング,15分
4. ディスカッション,40分
*アンケート,5分

もちろん、時間配分は人によると思いますが、あくまでも一例として僕が実践している内容を共有してみました。
ここで重要なのは、③フィーディングです。
④ディスカッションで、きちんとした議論がされるために、「ゲーム開発の理由」「対象となる分野の課題の明確化」「思考の整理」を③フィーディングで行います。
②ゲームプレイをして、そのままディスカッションにいってしまうと、ボードゲームの目的や対象分野の課題について見落とされがちになるので、釘をさすためにも③フィーディングが重要となってきます。
ボードゲームを活用した事例
さて、これまでボードゲーム作りの手順や実践手順を簡単にまとめて説明してきました。
「ボードゲームの活用かあ。まだよくわからないなあ。」という方は、これから紹介するボードゲームについて調べてみてください!
非常に参考になると思います!
Meet the Challenge. 海洋貿易ボードゲーム
これは、エストニアやノルウェーなど、北ヨーロッパの海を舞台とした海洋貿易の戦略を練るためのボードゲームです。
水産庁の方が多く集まる学会で用いられ、各国の官庁職員がボードゲームを通じて最適な貿易ルートや予算などを話し合う場として活用されています。
病原菌感染対策ボードゲーム
▶︎「感染対策に関するボードゲームと講義による 学習効果の比較に関する検討」(pdf)
看護師の感染症対策学習において、ボードゲームを使用した時と通常の講義とで、知識の定着にどのような差が生じるかを調査した文献です。
ここでは、ボードゲームを用いると「モチベーションの維持・動機付け」に長所を持ち、通常の講義では、「知識の包括的な取得」に長所を持つとされ、どちらか一方ではなく、両方とも用いる学習スタイルが良いとされています。
自治体経営ボードゲーム
自治体の財政管理手法などを学ぶ上で、ここ数年はやっているボードゲームです。
財務管理と聞くと難しいそうに感じるが、ボードゲームを用いることで、”「財務管理における最重要点・全体の流れ」を手軽に学ぶことができる”という評判で、全国に広がっています。
SDGs(持続可能な開発目標)学習ボードゲーム
▶︎SDGsボードゲームの説明
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。
by 外務省
聞いただけではピンときませんが、一言でまとめると、
「地球と人類が繁栄するために、世界全体で取り組むべきことを定めた目標」
それがSDGsです。
SDGsボードゲームでは、取り組む内容、またそれに伴う経済活動の変化や取り組むべきことをボードゲームを通じて学べるように設計されています。
シリアスゲーム,ボードゲーム教育に関するオススメ書籍
ゲーミングシミュレーション,シリアスゲーム,ゲームを用いた教育などについて学びたい方は、こちらの書籍をオススメします!
ボードゲームを用いた教育は奥深い。
いかがでしたでしょうか?
「ボードゲームって、奥深い!教育に取り入れてみたい!」と興味を持っていただけると幸いです。
ご質問などあれば、いつでもお気軽にコメント残してくださいね!
では、今回はこれまで!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ご意見ご感想などありましたら、ぜひコメントをお願いします!
また次回お会いしましょう!