人工知能,テクノロジー,弊害

人生論

人工知能は、仕事ではなく、やりがいを奪う?とある味噌職人の心の苦しみ。

Pexels / Pixabay

こんにちは。

ゴリぱちです。(@3Bgoripachi)

人工知能や機械学習といったワードが世間で飛び交い、「仕事が奪われるかもしれない!」「いや、人間は仕事から解放されるんだ!」と、様々な意見が飛び交っていますね。

僕自身も、「一体どうなるんだろう?」と思っていたのですが、とある職人の方のお話を聞き、「僕らは仕事ではなく、やりがいを失うんじゃないんだろうか?」という考えを持つようになりました。

人工知能が与えるインパクトと比べられるか分かりませんが、人類の大飛躍の一つに、イギリスで起きた産業革命があります。

蒸気機関などの開発により、当時も人たちも「これで人間は仕事をしなくてよくなる!」と、今の人工知能と同じような反応をしたと言われています。

なので、産業革命で起きたことと、人工知能によって起きることは、少し似ているんじゃないかと思います。

これは、僕がとある味噌工場で、味噌の製造工程を学んでいる時に出会った味噌職人さんのストーリーです。

彼の話から、「技術の進展は、便利さと同時に、仕事のやりがいを奪う」という話も、案外間違いじゃないと思うかもしれません。

ただのアシスタント

味噌工場で味噌の製造工程を学ぶため、とある味噌工場に2週間泊り込むことになった。

その味噌会社は、江戸時代から続く、とても由緒正しい会社だ。

僕はそこで、2人の先輩の元で、味噌作りを学ぶことになった。

1人はAさん。理系の国立を卒業し、研究開発部の部長をしており、商品作りのエース。年齢は40歳くらいだろう。

もう1人はBさん。高校卒業後、味噌作りの職人として40年勤め上げている味噌作りのプロだ。(今回の話の主人公)

最初の1週間、僕はほとんどAさんの元で色々学んでいた。

現代の味噌作りは、製品の品質を保ち、かつ効率よく、コストを抑えるため、大規模な工場で生産されている。

Aさんは、その工場=機械を扱うのがとても上手かった。

僕は、Aさんから、機械の使い方や、どんな状態の原料を機械に入れるのかを教えてもらった。

その間、Bさんは他の機械の整備をしていたので、ほとんど話す機会がなかった。

僕「Bさんはなんでずっと機械をいじってるんですか?」

Aさん「彼は高卒で、機械とかに疎いから、色々学んでもらってるんだ。」

僕は、Bさんに対して「アシスタントみたいなものか。」と勝手に思ってしまった。

この時は、Bさんの技術や思いについて、何にも知らなかった。

味噌職人

そんなこんなで、Aさんに機械のことを教えてもらって、早10日が経過していた。

しかし、Aさんに急に出張が入り、僕はBさんと機械のメンテナンスをすることになった。

機械のメンテナンスとは、味噌の材料である、米や麹などを混ぜる機械に生じた詰まりを取り除く仕事だ。

その作業は、朝の9時から夕方の3時まで行われ、昼ごはんを食べる間もなかった。

作業終了後、僕はBさんと2人っきりでランチを食べることに。

今まで全然話したこともないので、気まづく無言でいると、Bさんが急にこんなことを言ってきた。

Bさん「味噌作り、面白いか?」

僕は、正直な思いを伝えた。

僕「初めは面白かったです。いろんな種類の機械を見れたので。でも、正直いうと、すでに飽きてしまいました。機械に突っ込む原料をきちんと保存して、機械を正しく動かし、その機械をメンテナンスするだけ。」

そこまで言うと、Bさんが顔を真っ赤にしていた。

僕は、「しまった!!!!」と思い、謝ろうとすると、Bさんはこんなことを言ってきた。

Bさん「そうだとも!なんて退屈な仕事なんだ!味噌作りは、毎日葛藤しつつ、自分の技術を出し切り、もっといいものを作ろうと切磋琢磨する、本当に面白い仕事なんだ!でも今はなんだ!ただの機械いじりじゃないか!こんな味噌作り、誰が楽しいんだ!」

僕はびっくりした。普段無口なBさんが、こんなに情熱を持って話すとは思わなかったからだ。

僕「Bさんって、高卒から入ったんですよね?当時はどんな感じだったんですか?」

Bさん「当時の味噌は、全部樽で作られていた。その樽の材料も、最高の木材を使っていたし、先祖代々、江戸時代からの味噌職人がたくさんいた。味噌の品質は日本一だったよ。俺も、その先輩たちに鍛えられて、味噌作りは天職だったんだ。俺は、その味噌作りのトップをしていたんだよ。」

僕「え、そうなんですか!?すごいじゃないですか?でも、なんで今は機械のメンテナンスを?なんで味噌作りを仕切らないんですか?」

Bさん「10年前かな。当時の社長がこう言い放ったんだ。“競争が激しい昨今では、コストを極力減らさないといけない。そこで、我が社は全面機械化を導入することにした。なので、不要となる味噌職人たちを解雇せざるおえなくなった。申し訳ない。”ってね。そこで、俺らはいきなりクビになったんだ。ただ、俺の場合は、味噌作りのトップだったから、”味噌製造の機械化の原料管理などを頼む”ってなって、残ることになった。でも、俺は機械に疎いし、よく分からない。そこに、大卒のやつらが入ってきて、一気に味噌作りの仕事をかっさらっていった。どんな味噌が美味いかは、どうやって美味く作れるかは俺が一番知っているが、機械が扱えないからその知識や経験は完全に用無しになったんだ。俺は天職を奪われて、やりがいもなくなってしまった。

彼は、機械化によって、天職だと思って必死に働いていた味噌職人という仕事、いや、やりがいを奪われてしまったのだ。

会社が必要としたのは、伝統的な味噌を作る職人ではなく、機械の扱いに長け、統一感のある商品を作れる大卒だったのだ。

彼は、機械化によって、徐々に工場内での立場、居場所を無くしていき、今は黙々と機械のメンテナンスをする仕事しかなくなったそうだ。

一通り話すと、Bさんは涙ぐみながらこう言った。

Bさん「機械化が悪いとは言わない。時代の流れだ。それもわかってる。だけど、俺は悔しい。機械に負けたと思うと、悔しいんだ。あんな半端な商品を出したくないんだ。俺の周りの職人だって同じさ。機械化によって、俺はやりがいを失ったんだ。仕事はあるさ。仕事は別に生まれるものだ。でも、俺の人生のやりがいは、そう簡単に生まれるものじゃない。俺のやりがいは、機械によって奪われたんだ。

テクノロジーの弊害

テクノロジーの発展によって、社会は便利になっていった。

しかし、その影で、自ら誇りにしていた仕事を失ってしまった人も大勢いた。

ここで大切なのは、Bさんの「仕事は別にある。でも、やりがいは無くなったんだ。」という発言だ。

人工知能も、「これまでの仕事のうち、半分以上はなくなる」と言われているが、おそらく仕事はあるだろう。

味噌工場のパターンと同じように、機械のメンテナスだったり、新しい仕事は生まれるだろう。

でも、仕事に対する誇りや、やりがいはどうだろう?

今まで誇りに思っていた仕事を、「うん、もうそれ時代遅れだし、コストもかかるから不要だよ。」と言われて、「はいそうですか。では、違う仕事に誇りを持って取り組みます」とすぐ言えるだろうか?

職人として働いてきたBさんにとって、それは至難の技だった。

テクノロジーの進歩はものすごい速さで進んでいくし、世の中はどんどん便利になる。

ただ、その影で、仕事ではなく、やりがいを失ってしまった人がいるという事実も、頭の片隅に置いておくことに意味があると思う。

では、今回はここまでです。

人工知能といったテクノロジーの進歩に関して、新たな意見に出会うことができたと思っていただけたら幸いです。

また次回お会いしましょう。

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